
もい。
タンペレ、最終日。
夕方には、電車で、ヘルシンキへ、南下します。
昨日、ネシ湖の東と、街の北、2軒の公衆サウナで、しっかり、フィン式の1日をいただいて。
最後の朝は、宿を出て、坂の街、ピスパラ(Pispala)地区の高台へ、ゆっくり、上がっていきました。
木造の家並みが、雪化粧の帽子を、うっすら、かぶった、静かな丘。
その坂の途中に、そっけない小さな看板と、木の扉が、ちょんと、あります。
『Rajaportin Sauna(ラヤポルティン・サウナ)』
1906年開業、いわずと知れた、世界最古の、現役の、公衆サウナ。
そして、僕にとっては、ここも、6年ぶり2度目の再訪です。
Rajaportin=「境界の、門」の、サウナ。

Rajaportin は、フィンランド語の、raja(ラヤ=境界/境)と、portti(ポルッティ=門)が、くっついた名前の、属格のかたち。
つまり、「境界の門の、サウナ」。
ピスパラは、その昔、街の中心と、外の田舎との「境目」だった地区で、いまも、坂道と、木の家と、湖の景色が、その名残を、うっすら、残しています。
そこに、120年ちかく、絶えることなく、火を守り続けているのが、この1軒。
「世界最古」という肩書きは、ずっしり、重そうですが、外観は、とても、そっけない。
派手さゼロ、看板もそっけない、扉ひとつ。
逆に、その、素っ気なさが、120年、まっすぐ、生活として、続いてきた、証拠なのだと思いました。
開店準備を、ちょっとだけ、お手伝い。そして、「モロー」。

開店時間の、ちょっと前に、着いてしまいました。
扉のそばで、ふう、と、ひとつ吐きながら、待っていると、常連の方が、ウレタンマットを、そっと、準備しています。
ひまなので、ちょっとそれを、勝手に、お手伝い。
ベンチの上に、ウレタンマットを、2枚、3枚と、ならべる、それだけ、なのですが、120年続いてきた場所の開業準備に、指先ひとつ、そっと、まぜてもらえたようで、うっすら、うれしい。
時間になって、扉が、ゆっくり、開きます。
更衣室に入って、服を脱ぐと、みなさん、ほぼ、顔見知りみたい。
日本の、街の銭湯の、あの空気に、うっすら、似ています。
とりあえず、「モロー。」と、声を、ちょんと、置いてみます。
このあたり、タンペレ周辺は、「モイ」ではなくて、「モロー」だと、以前、誰かに、教わった気がしたので。
(正解だったかは、正直、まだ、自信がありません。でも、「モロー」って返ってきたから、たぶん、大丈夫かと)
天井の近い、2階と、知らないおっさんの、肌。

掛け湯を、済ませて、2階のベンチへ。
すでに、ほぼ、満員。
天井が、こつん、と、頭のすぐ上まで、下りてきています。
ロウリュがひとしずく落ちるたび、湿った熱が、まっすぐ、真上から、耳と、頭皮を、じん、と、なでていく。
みなさん、その熱の中で、口々に、なにやら、楽しそうに、喋っています。
フィンランド語なので、話の中身は、まったく、わからない。
仕方がないので、こちらは、勝手に、想像を膨らませて、楽しみます。
(少なくとも、たぶん、サウナ自体の話は、してなさそうだな、ということくらいは、なんとなく、伝わってきます。)
すでに満席なのに、階段の下から、ぽつり、ぽつり、と、まだ人が、上がってきます。
気がついたら、隣の、知らないおっさんの肩と、僕の肩が、ふれあっている。
日本の銭湯だったら、たぶん、ぱっ、と、身を引いて、逃げ出しているところ。
なのに、ここでは、なんだか、それを、しずかに、受け止めていられました。
「これが許せるのは、ここが、世界最古だから?」
ロウリュの、じゅっ、という音の合間に、そんな、しょうもない仮説を、こっそり、立ててみました。
小雪の、ベンチと、バスタオル1枚の、余白。

汗を、ざばん、と流して、外へ。
小雪が、うっすら、舞う中、木のベンチに、腰を下ろします。
このスペースは、男女共用。
とはいっても、みなさん、裸に、バスタオルを、ぐるり、1枚、巻いているだけ。
それで、じゅうぶんに、成立してしまう、この空気の、余白。
男女で、ベンチを分けて、目線を分けて、境界線を、はっきり、引く、というやり方も、もちろん、ひとつの正解ですが、この、雪と、木と、湯気と、バスタオルだけで、成立している、フラットな空気も、また、大切な、ひとつの正解のように、思えました。
寒くなって、屋内に、そろりと、戻ります。
ロッカースペースでも、みなさん、また、楽しそうに、ご歓談。
6年前に、ここに来たときは、「Where are you from?」と、英語で、話しかけられたのを、うっすら、覚えています。
今回は、そういう瞬間は、特に、なし。
「もう、日本人は、珍しくないんだろうな。」と、うれしいような、少し、寂しいような、両方の気持ちで、頬を、ゆるめます。
そういえば、東洋人が、僕のほかにも、もうひとり、いました。
日本人かどうかは、目線を合わせるほどではなかったので、わからないまま、です。
6年ぶりに、ただいま。原点に、ふれる、時間。

今日は、タンペレ最終日。
このあと、駅で電車に乗って、空港へ、移動しなければ、なりません。
なので、この1軒での滞在は、約1時間、いつもより、ちょっと、短め。
時計を、ちょんと、見ながら、最後の1セットを、じっくり、味わいました。
最上段のベンチで、天井近くのアチアチを、じん、と、受けとめながら、ふと、思い出したのが、初めて、このRajaportinに、6年前に来た日の、自分の姿。
あの頃、僕は、ほとんど、がむしゃらに、サウナを、追いかけていました。
とにかく、いろんなサウナを体験したくて、ただひたすら、扉を開けて、身を放りこむ、あの繰り返し。
そこから、6年。
日本の、街の銭湯から、飛行機で1本の遠くの1軒まで、ずいぶん、たくさんの、扉を、開けてきました。
そして、いま、あらためて、こうやって、120年続いてきた、この小さな部屋の中で、また、汗を、こぼしていると、しっかり、確認できることがひとつ、あります。
「やっぱり、今でも、サウナが好きなんだなあ。」ってこと。
ちょっと、感傷的になりつつ、扉を、そっと、閉めて、施設を、あとにします。
帰り際、ウレタンマットを、しかせていただいたベンチで、いま、常連さんがバスタオルで、楽しそうに、会話していました。
また、バスに乗って、ぽつぽつ、駅へ、向かいます。
タンペレの、湖と、丘と、湯気に、思いを馳せながら。
6年ぶりに、ただいま
がむしゃらにサウナを求めていたあの頃を思い出したり
やっぱり今でもサウナが好きなんだなぁと改めて思ったり歴史ある場所で自分の原点にふれる貴重な時間
— Greippi(2026.01.02 2回目の訪問)
Rajaportin Saunaさんの様子はYouTubeでもまとめています。よかったらどうぞ。
タンペレの湯気の記憶を、食卓にも。
寒いタンペレで、体を温めてくれたのは、サウナと、サーモンスープ。
フィンランドのものを、自宅で、というのはちょっと難しいけど、北海道のサーモンスープで、あの記憶をもう一度。
📍 施設情報
Rajaportin Sauna(ラヤポルティン・サウナ)
🗺 Pispalan valtatie 9, Tampere, Finland / ピスパラ地区(街の西側の坂上)
🏛 1906年開業 / 世界最古の現役公衆サウナとして知られる歴史的な1軒
🚶 アクセス:タンペレ中心部から徒歩・バス/坂道の途中に小さな入口
🔥 サウナ:薪のロウリュサウナ/2階のベンチ/天井が近くロウリュ時はアチアチ
👤 男女別のサウナ室/外の休憩スペースはバスタオル巻きで男女共用の場面あり
☕ 併設キオスク/小さなカフェスペースあり
👥 客層:地元の常連さんが多く、朝いちは顔見知り同士の会話も/観光客も少しずつ
👋 挨拶:タンペレ周辺では標準の「Moi(モイ)」ではなく「Moro(モロー)」が地方色
🗓 訪問日:2026年1月2日/6年ぶり2度目の訪問(滞在約1時間)
※営業時間・料金・営業日は公式サイトで最新情報をご確認ください
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